takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ミラクルドリンク・ギガ製造工場・その1

昨夜、女学生の由紀の血を吸い取り、工場敷地内にある未無来しか入ることが許されない建屋に入って巨大なタンクに排出した。そして、工場の近くの山に隠してある宇宙船の中のカプセルに入り一夜を過ごした怪物が事務所に戻った。一番奥にあるデスクの椅子に座ると総務の中村が、書類を持って前に立った。「社長、例のキリクノと高校生見学の件なんですが・・・いかが致しましょう?」未無来は、工場内や製造工程を外部の者に見せることに慎重だった。乾井が部下や薬品関係の者を引き連れ視察に訪れたいとの申し入れがあった時も、何かと理由をつけて断っていた。いくらキリクノをコマーシャルに起用しているとしても、カメラマン同伴で撮影されたら危険度は増す。まだまだ海外全域に普及していない今、万が一報道されて疑問を持たれたら、道半ばで作戦を変更しなければならない。未無来は、見学申し入れを断るつもりでいた。「ちょっと、その書類を見せてくれ」はいと言って、差し出された最初のページに目をやる。と、高校名の後、新聞部として北見美鞘と明記してある。
(北見・・・美鞘?彼女が来るというのか。何かを嗅ぎつけてか?・・・。おそらく、そうに違いない)暫くの間、じっと美鞘の名前を見つづけた。中村が、不思議そうに未無来を見ている。未無来は、既にグリーンビッチ製の剣の持ち主が、美鞘であることを調べ上げていた。「なるほど・・・、面白い」思わず声に出して呟いた。えっ?と中村が怪訝そうに未無来を見る。「この工場見学、許可しよう。もっと広く世間にアピールしなけりゃな。ガラス張りの優良工場を世間に観せて、ミラクル・ドリンクが、安全、安心な栄養飲料であることを広める良い機会かも知れん」と、急に上機嫌になって言う社長の言葉に、根暗な中村にしては珍しく「はい!社長のおっしゃる通りです。近々、都合の良い日に予定を組み込んで提出いたします」と、晴れやかな笑顔で応えた。未無来は中村が控えた後、思案した。(来たらどうするか・・・だな。一気にかたを着けるか?慎重に様子観するか?いずれにしても、このような大胆な行動をとる彼女に会えるってのは、ことのほか楽しみで仕方ない。この星に来て、こんな気分になったのは初めてだな)未無来は窓の外の落葉樹が、はらはらと風に揺れて葉を散らせていくのを、デスクから眺め続けていた。