takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ギガ製造工場・その8

昭雄と美鞘もとりあえずはワゴン車を降りて、外の空気を吸おうとコンビニの方に歩いて行った。
こんな田舎でも駐車場には乗用車が3台停まっている。キリクノの連中は既に店内に入ったらしく姿が見えない。ふと見ると店の外に設置してある吸い殻入れの前に橘が立っていた。
橘のタバコを吸っている姿をふたりとも見たことがなかったから、少し驚いた。
「おい、お前たち!」橘が、手招きをしている。ふたりの後ろを追うように、高畑も降りて来た。
高畑も方向を変えて橘に近づこうとしたが、「いや、この二人に話があるんです。高畑さんは、買い物にでも行って下さい」と、手の平を振っている。高畑は一瞬首を傾けたが、「あっ、そう」と言って、店内に入って行った。昭雄が「橘さんってタバコ吸うんですね?」と訊くと「ああ、日に10本程度だけどな」昭雄が更に何か言おうとしたが「そんなことはどうでもいいんだ。打ち合わせをちゃんとしとかなくちゃ」いつになく真剣な表情でふたりを交互に見ながら早口で言う。
「今日工場見学に来た目的は、美鞘ちゃんのご先祖さんからの言い伝えである、宇宙征服者が未無来社長なのかどうか確信を得るためが目的なんだよ」念を押すようにふたりを見る。
「はあ」と昭雄。美鞘は黙って頷く。「疑惑の人物ってのは俺自身も思っているが、なにひとつ確証がない。言わば、想像や思い込みだけなんだ。そんなので下手を打ちゃあ、揚げ足取られるどころかこちらが嵌められるおそれもある。いいか?今日は絶対に怪しまれるような行動は控えるんだ。美鞘ちゃんも・・・、剣は車の中に置いていけ。でないと、取り返しがつかなくなるからな」わかったか?と言うように真正面から美鞘を見つめる。美鞘としては、工場内でも確証さえ掴めれば攻撃するつもりでいた。隙を突いてでも討ち取らなければ人類が滅亡する。手段を選ぶ余裕はない。だが、警察官でもある橘の言うこともよくわかる。100パーセント間違いがない限り、剣は使うべきではない。あの剣は、何でも真っ二つにしてしまう。間違いましたでは済まないのだ。
美鞘は下を向きながら、「そうですね。分かりました、置いて行くことにします」と溜息混じりに橘に言った。橘は、ほっと息を吐き「そうか!それがいい。少し時間は掛かるが、十分に作戦を練って勝率を上げなきゃな」と言って小さく笑った。