takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

父子の決闘・その3

居間で付けっぱなしのテレビがバラエティー番組をやっている。レポーターが何やら長野県の片田舎で聞き込み報道をしているようだ。テロップには『若い女性の行方不明者続出‼家出?それとも事件?』と銘打ってある。農家の男性にマイクを向け話を聴いている。

年老いた男性は「今時神隠しなんて言えば笑われるかも知れんが、忽然と消息を絶ってしまってる。うちの近所でも二人のおなごの高校生が次々と帰ってこなくなったんじゃ。親に訊いてもなんの兆候もなかったと言ってるしな。気色悪い事やって」冴子と立山が話す間が取れず、丁度テレビ画面を見た所だった。冴子は「ここから離れているとしても気持のいいものじゃないね〜。うちも女の子がいるからこう言う事件が出ると心配になるのよ」「最近、この手のニュース多いな。そう言えば長野じゃなかったっけ?山中に女学生の制服を着た干からびた死体が出たのってさ。」「ああ、そうだったわね。かなり前になるけど。おお、嫌だ!」冴子は身震いする様に薄物のカーデガンを両手で胸元に引き寄せ顔を曇らせた。それを頃合いとみて立山は響を出て車を取りにうちに戻った。(そろそろ3時か。1時間以上掛かるからガソリンスタンドにも寄ってっと)(しかしいよいよやるのか。避けられないのか。何とか和解できないのか?)やるせなさに打ちひしがれながらうつむき加減でとぼとぼと歩く立山の姿は、歳とった老人の様に心もとないものに映った。