takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ギガ製造工場・その14

イブはグレートデストロイと対峙するかもしれないからと、自室のクローゼットの片隅に隠している布バッグを持って来ていた。
その中から手のひらサイズのメイクケースを取り出すと、蓋を開けて黄色いコスチューム引っ張り出した。それを目の前に翳すと目にも止まらぬ早さで着替えた。(あっ、この色。こんな時には目立ち過ぎて不向きなんだけど)と、小さくため息を吐きながら耐久性のシューズに履き替えた。
車の中からスコープモードにして警備員の動きを観察する。車を出た後の行動は、既にシュミレーション済みだ。
警備員が受付窓口から離れ、奥に引っ込んだ。(今だ!)車から下り、風のように工場の裏側に走った。従業員の姿は全くない。建屋の外周は時が止まっているかのように静まり返っている。人の背丈ほどあるエアコンの室外機や、キューピクルがあちらこちらに設置されていて、屋上辺りから大量の蒸気が天に向かって上っている。イブは捜索モードに切り替え人には聴こえないような細微な物音や視界に入る僅かな変化に反応できるようにシフトした。
まだかなり距離は離れているが、不規則なモーター音と、アイドリング状態のエンジン音が聴こえてくる。壁伝いに進んで行き、態勢を低くしながら覗き込むと、10トントラックが3台、整然と並んで停止していて、パレットに『ミラクルドリンク・ギガ』が箱詰、梱包され荷崩れしない様にラップで巻かれ、それを乗用フォークリフトで従業員が荷台に積み込んでいる所だった。高畑のセカンドバッグに入れた右耳から、絶えず情報が入ってくる。皆は応接室に入っていて、丁度今、中村がコーヒーとお菓子を運んできたところだ。(あまり時間がないな・・・)そう思いながらコンピューターに建造物のチェックをさせている。すると、一か所に反応が出た。
この出荷場の向こう側の目立たない位置に、工場とは別の小さな建物がある。看板がありスコープにして読むと、『関係者以外の立ち入り厳禁』と記している。
「私以外何びとも立ち入ることのできない場所」未無来社長が言っていたのはあの倉庫のような建屋に違いないとイブは思った。