takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

ギガ製造工場・その15

イブの人工頭脳がこの先の行動を模索する。リフターがひとり作業中。荷積み中のトラック運転手は運転台から降りて、その作業を見ている。
荷積みの順番待ちをしている残り2台の運転手たちは、各々トラックの中で待機中である。
彼らの前を走り抜けるのか、それともジャンプをするのか?ジャンプした場合どうしても一度は着地しなければ、目的の建屋には辿り着けない。
かといってレベル3に引き上げれば、予測がつかない事態になりかねないし、エネルギーを大量に消費するので回復させる時間が必要になる。
都合よく全員が視線を逸らすタイミングを縫って通り抜ける確率は限りなく無いに等しい。(じゃあ、強制的に全員の視線を逸らせられないか?)
辺りを見回せばコンクリートブロックが積んであるのが見えた。(やってみるか!)十数メートル離れている、持ち上げたばかりのパレットに載せた箱に向かって
力いっぱい投げた。『ブオン』という風を切る音と共に、灰色の物体が物凄い速さで飛んで行った。スピードガンがあれば200キロ超えを記録しただろう。
一瞬の出来事だった。荷が砕け散った爆音と、リフトが横転した轟音が重なり合って鼓膜が破れる程に響き渡った。何が起こったのか訳が分からず放り出されたリフターは、倒れながら怯えているが、幸いにも怪我はないようだ。降りて作業を見ていた運転手は、体を地面に伏せて両手で頭を守っている。待機中の運転手が二人、恐る恐る降りてきて「おい、大丈夫か?製品が爆発したのか?テロじゃないだろうな?」と、リフターを抱え上げている。イブは皆が砕け散っている積み荷に注目している隙を縫って、レベル2で音もなく駆け抜けた。建屋に着いて振り向き、彼らに向かって両手を合わせて(ごめんなさい)と、頭を下げた。腰を低くして辺りを見渡しながら、ノブを握る。(あっ、施錠してある)当然鍵は掛かっている。(これって人間が作ったセンサー式よね~、却って楽かも)髪の毛を数本抜き指先で紙縒り状にして、不具合が起きた時にリセットする小さな穴に突っ込んだ。そして指先から電流を放出させた。バチバチッと火花が散り、ロックが解除された。(博士がSF好きで、ロボコップなんかを観て真似したのよね~。それが今回は幸いしたわね)一瞬笑顔をつくったが、気を引き締めたのか、真剣な表情で最大限の警戒のもと室内に入って行った。