takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

イブ、原点回帰・その2

コンビニに着いて駐車場に車を停めると、疲れ切った表情でキリクノのメンバーが降りて行った。昭雄は、まだ起き上がれないでいる美鞘を心配そうに見ている。美鞘は意識はしっかりしていて目も開けているのだが、ショックが尾を引いていて、その影響が体を思うように動かせない状態にしているようだ。昭雄が声を掛けるが、「うん」とか、「ううん」とかしか返してこない。喋る事さえ疲れるという感じだ。橘が後ろの座席に戻ってきて、昭雄に「どうだ?美鞘ちゃんの具合は」と尋ねると「はい。段々と落ち着いては来てるんですけど・・・剣を握りしめる手に力が戻ってはきています」と、美鞘を見る。イブが片方の腕だけで美鞘を脇に抱えバスに乗り込んで来た時の記憶が蘇る。あの時は完全に意識を失くしていた。美鞘の座席には真紅の鞘袋が立て掛けてあった。座らせるわけにもいかないので、昭雄が立ち上がって席を開け寝かせたのだが、意識がないにも関わらず、美鞘の腕が剣を取りにいき、胸元で抱きしめた。「なにか相当なショックを受けたみたいで。あの時のイブさん、すごかったですよね。いくら美鞘ちゃんが女性でも、あんなに軽々と片腕で・・・」「ああ、ロボットだからな」橘が当然のように返答する。「ロボットって、まだはっきり分からないのに」と昭雄が苦笑すると「言ったんだよ、本人が。私は、救助用に造られたロボットだって」「えっ?!言ったんですか?いつ?」「コンビニに着く少し前に。俺と高畑さんと話している時に言ったんだ」「・・・ああ、そうなんですかー、唐突過ぎますよね~。もう、ライトオン・ミュージックでは使ってもらえないかも知れないですね~」昭雄は美鞘や橘同様、イブがほぼロボットに違いないと思っていたから、大して驚かなかった。「それにしても、高畑さんの運転酷かったですよWW。僕、美鞘ちゃんに席を貸しちゃったでしょ?座ることもできずどうしようかと思っていたらあのスピードだもん。美鞘ちゃんが転げ落ちそうで。だから、落ちないように覆い被さるっていうか、支えるのに必死だったんですよWW」昭雄がなぜか赤面しながら渋い顔をして、口を尖がらせている。「ああ、俺も知ってた。いや~、お前、ナイトみたいでかっこ良かったぞ。内心、喜んでいたんじゃないか?」クスクスと笑う。「冗談じゃないですよ~、必死だったんですから~」昭雄の顔が増々赤らむ。と、その時「ごめんね、昭雄君」そう言って美鞘が上半身を起こした。「ああ?美鞘ちゃん、いいの?起き出しても。気にしないで横になってていいんだよ」「ううん、ありがと。大分良くなった」まだ良くない顔色の美鞘が作り笑いの顔をふたりに向ける。「何があったかは、ここでは話さない方がいいと思うから、後でゆっくりと。私自身、どう話せばいいか、整理できていないし」「ああ、それは構わないよ。美鞘ちゃんが話そうと思う時で」橘が言い、昭雄が労わる様に笑顔で頷いた。