takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

(第1章)親子の死闘・其の8

まっとんは思った。おそらく奥さんはラーメン作りを拒否したのだろう。しかし不器用な立山が中学生とはいえ客人に食欲をそそるラーメンを作れるとはとても思えない。かくなる上はと、コンビニへ走ったのだと想像する。「嫁のまずい料理を食べて、腹でも壊されたら適わんからな。近頃のカップ麺は店で食べるのと変わらん位いい値段するのがあるんだな?これも結構高い奴だ」と、日〇の〇王を見つめている。「後、3分ほどか」腕時計を見ながら立山が話し出した。「去年の暮れに長女が生まれたんだけどな~、ハヤテのお陰で借金も返し、郊外の大型スーパーの就職も幹部の世話で無事果たせたのに。ワシの気まぐれな性格のせいで全てオジャンにしてしまった。これでは妻子に咎められても仕方ないと自分でも分かっている。実は青年に成長したハヤテに再会するまで、チンピラのようなことをやってた。この近くに各駅列車しか停まらない駅があり、そこの待合所でカモが来たら引っ掛けようと日中じゅう、待ち伏せのようなことをしていた。ハヤテは如何にも田舎者丸出しで、大金を警戒せずに持っていた」「いつも小遣い銭程度を集っていたんだが、バッグからのぞいている札束につい目が眩んじゃってな。ハヤテが油断している隙に奪って逃げたのよ。( ̄∇ ̄;)ハッハッハ」「後で考えるとなんて無謀なことをやったんだと、生きていることが恥ずかしくなるような行為だが、生活に困窮していたのは事実だし、数千万円のお金を無造作に見せつけるハヤテもハヤテだし」「その時もか~ちゃんはワシに愛想を尽かしたが、二人目が腹に入っていたし出て行くことはなかった」「結局、バッグから抜き取った100万円の束、5つはハヤテの恩情で返さなくてよくなり、そのお金で借金を返済することができたんだ。だから、ワシたち一家はハヤテには頭が上がらない。一生の恩がある」「おっと!」時計を見た立山が盆からラーメンを持ち上げ、こたつのテーブルの上に直接置きかえた。「さあ、食べようぜ。ほら、割りばし」蓋を取って液体スープと具を放り込み、柔らかくなった麺を、ぐしゃぐしゃかき回した。まっとんも、同じようにカップに放り込みながら、何か言葉を返そうとしたが見つからず、「このチャーシューはもっと大きい方がいいですね」と、つまらないことを口にした。