takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

(第1章)親子の死闘・其の9

二人ともラーメンの汁を全部飲み干し、満足気にひと息吐いた。

「あ〜、美味かったな、おい」「はい、美味かったすね〜」顔を見合わせて微笑んだ。

発泡スチロールの容器を重ねて隅っこに片付けながら、「お前んちは、ここから遠いのか?あの公園の近くなら同じ名古市内でも、距離的には結構あるな」「ここは松田町ですか?僕が住んている街は隣の稲田町です」「そうか。車で30分だから、隣町でもかなり遠いな」

「中学校は当然町内にあるんだろ?」「そうです。去年から、松田町の中学校が少子化の影響で生徒がメチャ少なくなって、うちの中学校に合併されたんですよ。ここから稲田町まで通学するの大変なのに大人の都合で子供は、ね〜」「逆だったらと思うとぞっとしますよ」「そうだったのか?ワシはそういう事に疎いからな〜」「ってことは、麗美ちゃんも、稲田中に通っているんだな」「麗美って、確か系図に載っていた響家の娘さん?中学生なんですか?」「あぁ、1年前少6だったから、順当に行けば中1だな、あのお転婆娘がねぇ」

「そういえば、松田中から編入してきた生徒の中に、メチャ可愛い女の子が居ると評判だったな。だけど、言い寄った男子は片っ端から毒舌の嵐に会い、皆こころ折られたと聞いたけど」まっとんは愉快そうに大笑いした後、あっと、奥の部屋を見て口を押さえた。

「ははは、さすが麗美ちゃんだ。そうでなくちゃあ」と、満足気に頷いた。

「ところで立山さん。あの写真が1年前と云う事は、鞍馬龍二さんと疾風丸さんの戦いは決着した。現在、両者は健在なんですか?」

「ワシは父の龍二さんが地に伏して動けなくなっている姿しか確認していない。その後、音信不通になったから。ハヤテは、悪徳製薬研究所の建物を、外側から風爆弾を使って全て窓ガラスを粉々に割り、中の装置や研究資料、薬物の原料まで、尽く破壊しまくった。そこで化学反応を起こしたのか、火災が発生し研究所は全焼に近い状態だったらしい。らしい、と云うのは、ワシらはここにいてはマズいと判断して、急遽引き上げて来たからなんだ」「ええぇ?メチャクチャじゃないですか!よく、警察に捕まらなかったですね」

「あの事件のニュースを大きく取り上げるテレビ局や新聞社があるかと様子を見てたが、全くなかった。隠蔽したんだろう」

「すげーな〜。世の中、奥深いっていうか…。中学生の僕には、とても理解できないや」「だから、この事件を取り上げて、読者に信じてもらえるかどうかが、肝心なところさ。龍二さんは駄目でもハヤテには協力してもらいたいと思っている」「ハヤテさんに会えるかも知れないんですね?」まっとんは目を輝かせた。立山は頷きはしたものの、如何にしてハヤテをその気にさせるか顎に手を当て思案しだした。