takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

(第2章)親子の和解・其の1

「じゃあ、行くとするか?え~っと、あっ!名前聞いてなかったな?」立山が驚いたようにまっとんの顔を繁々見て、「あww、済まなんだ。まさか、こういう流れになるとは思わなんだから、男前とかお前さんとか君とか呼んで済ませとったわ」「ワシは立山圭太や、あんたは?」「失礼しました。自己紹介が遅れました。僕は、蒼菱正人と言います」
「えええっ?えらいしっかりした受け答えやな。おっさんか!」と言って、立山がまっとんの胸を漫才師のようにピシッと叩いた。それで二人は大笑いし(あっ!)と、急いで口を押さえた。「あおびしって、珍しい名字やな、どう書くんや?」と立山。「え~と、蒼は草冠に倉で、菱はひし形の・・・三菱の菱です」「ああ、なる程」立山は空間を見つめながら応えた。「じゃあ蒼菱君、そろそろ出かけるとするか?」「あっ、あの公園に戻るんですね?」そう言って立ちかけた。「いやいや、帰るにはまだ早いやろ」「実はこのコースは初めて山を下りて電車に乗って来たハヤテが辿った、記念すべきコースやで~」「駅でバッグを奪ったワシを追いかけてここまで来た。トイレに行ってる間に猛ダッシュで駅から居なくなったワシを如何にして追って来られたか?彼には優秀な探査機が付いてたんや」「探査機・・・ですか?」「そうや。信長という航空探査機や。2次元空間でしか見ていなかったワシは、絶対に追って来られない自信があった。それがまさかの3次元探査だよ。玄関を開けて『ごめん下さい』とハヤテの声が聞こえたときは、ど肝を抜かれたよ」「そして裏口から逃げたんだけど、ハヤテには風を操る術がある。絶対追って来れない距離だと自信があったが、後ろから猛烈な風の塊が砂塵を巻き込みながら追ってきた。逃げながら後ろを振り向いた時、空間の歪んだような異様な物が猛烈なスピードで追ってきたら、誰だって腰を抜かすって。それから、その塊に飲み込まれてもみくちゃにされた」当時の事を思い出してか、立山の顔が青ざめている。
ハッとして気を取り直し「駅からの目的地は『骨とう品古物商・響』だったんだ。今から行くんだよ、そこへ。それだけを言おうとして、要らんこと話してしもたわ」と、苦笑した。まっとんは「はあ」と返事しながら、麗美ちゃんが居るかも知れないなと考え、内心ドギマギして拒否反応を示している自身に叱咤した。