takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

(第2章)親子の和解・其の2

「ちょっと、響に行ってくる」と、立山。まっとんは玄関で既に靴を履き「お邪魔しましたー」と声を掛けたが、どちらの声掛けにも幸恵の返事は聞こえてこなかった。
路地から本道に出て二つ目の信号を左折れしたら、『骨董品古物商・響』のデカい看板が、目に飛び込んだ来た。築100年は経っていそうな重厚で渋みのある店舗兼家屋。
昔ながらの木材でできたガラス窓やガラス戸。それらのガラスはピカピカに磨かれており、外からガラス越しに店内を覗くと、一刀彫や陶磁器、伝統的な面や衣装がバランスよく飾られていて、思わず店内に入り、じっくりと見てみたくなる衝動に駆られる。
立山が馴染み客のように、戸を開けながら「ちわ~す」と、奥に声を掛けた。
立山の後に続いて店内に入ったまっとんは、入り口に置いてある猿の一刀彫に目が行き、その流れで商品棚につい足が向いてしまった。立山が摺りガラスを開けて、もう一度声を掛けた。すると二階の方から、「あ~、はいはい」と冴子の声が聞こえてきた。
すると「なんで、私がこんな服着なけりゃならないのよ。お母さんセンス悪過ぎ。私、嫌だからね、絶対に嫌!」麗美の大きな声が聞こえてくる。(なんだ、またやってんのかよ~)「もう~。好きにしたら?お母さん知らないから!」と、冴子が言いながら、階段を降りてくる。「あっ、立山さん、マルちゃんに会えた?」冴子は疾風丸を、マルちゃんと呼ぶ。「いや、行き違いになったんだ。ハヤテに連絡つけられないかな?」「多分、私の勘ではマルちゃんは日和山に戻ったんじゃないかと思うの。しかも、龍にいと共に」
「え?龍二さんと?」冴子が頷いた。その時、ドンドンと派手な音を立てて、麗美が降りてきた。「ちょっと、美紀ちゃんとこに行ってくる」二人の顔も見ないで、土間に降りてサンダルを引っ掛けた。そしてガラス戸に向かう途中で客がいるのに気が付き、「ちょっとあんた!汚い手で触んないでくれる?大事な商品なんだから」と、お客さんに対してポンポンとあまりにも非常識極まりない言葉が飛びだした。あまりの言葉使いに冴子が、怒り心頭で麗美に駆け寄って行った。すると、さっきとは打って変わってしおらしく顔を赤らめている娘の様子に、眉をひそめた。
「まっとん先輩がどうしてここにいるんですか~?私の家だと誰かに聞いてきたんですか~?」「あっ、いや、ごめん。汚い手で触ってしまって。あっ、僕を知ってるんですか?なんで僕みたいな者、あっ、なまえ、いや、仇名知ってるん?こっちがビックリですよ」
「え~!まっとんさん、超モテモテですよ。私たちのクラスの女子でファンクラブ結成してるんですよ~!」「え~?本当ですか?」まっとんは心臓がバクバクして、皆に聞こえてるんじゃないかと思った。