takakazuのブログ

家庭菜園と、趣味での小説

takakazuのブログの新着ブログ記事

  • 選ばれし救世主・その7

    継正は毎夜異星での夢を見る。江戸時代宇宙に対してどこまでの知識があったかは分からないが、幸いにも継正は物事に柔軟な考え方が出来るのか、 受け入れるのは早かったようだ。だから異星人を認めたし、彼からの話の内容も信用した。異星人から止められたことがひとつ。書き物として残さない事。第三者の者が開封して大... 続きをみる

  • 選ばれし救世主・その6

    継子(けいこ)は話を整理するように、少しの間押し黙った。皆はそれが伝わったように口を開くのを待っている。父の正男は運転中だから、話にのめり込み過ぎないように自身にセーブを掛けて、時折ナビの画面を視たり窓外の景色を意識して眺めたりしている。 「そうね~、まずはご先祖さんが異星人から授かった武器がどう... 続きをみる

  • 選ばれし救世主・その5

    「ちょ、ちょっと待って、お母さん!」美鞘(みさや)が、後部座席から身をのり出す様に母の話を止めさせた。 「あっ、ごめんなさい、話の途中なのに。ちょっとパニクっちゃって・・・」そう言いながら元の位置に座り直す。 「その話、私がその宇宙から来た怪物と戦わなきゃならないわけ?まさか、冗談でしょ?だってお... 続きをみる

  • 清志が消えた・その13

    「俺の提案とはこうだ。今日の所は立山を帰してやる。だが、ただ帰すのではなく伝言役を引き受けてもらう。そこの調子もんの甥っ子が言っていた学生を研究所に連れて行くから明日の・・・そうだな社員を皆帰してからの方が何かと面倒掛からないから夜7時に引き取りに来いと息子に言うんだ。足がないから、立山、お前が乗... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その12

    龍二が話した最強なる息子というのを一同がそれぞれに想像しだして、室内は静寂に包まれた。静寂を破ったのは又しても秀也の声だった。「叔父貴ー!誤魔化されてはいかんぜー。そいつは、そのおっさんを助けたいばっかりに嘘をついてるんだ。俺だって多少は知ってるんだぜ。龍二とおっさんは古くからの友達なんだってこと... 続きをみる

  • 選ばれし救世主・その4

    車中での母の話の内容に皆は驚きを隠せなかった。が、その一語一句を聞き漏らすまいと皆は押し黙っている。その内容とは・・・ 今から三百年程前の深夜の事。継正の眠っている枕元に何者かが立っていた。継正は剣豪である。その彼にして気衝く事のできない侵入者であった。 (ツグマサ・・・)耳から入ってくる声ではな... 続きをみる

  • 選ばれし救世主・その3

    美鞘の住む埼玉と母の実家である群馬県とは隣県ではあるけれど車で行くには1時間以上かかる。 母の継子は美鞘と代わり助手席に座った。そして正男にアドバイスを受けながら、通販で買った小さなカーナビに行き先をセットした。父の正男は、継子の実家には2度だけしか行った事がなかった。1度目は結婚を認めてもらうこ... 続きをみる

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  • 選ばれし救世主・その2

    車を脇に寄せハザードランプを点けながら憔悴しきった父がいる。蹴られたところが痛むのか、顔を顰めて体のあちらこちらを摩っている。だが大した怪我でもないであろう、 向こうは暴力のプロなのだ。マル暴がうるさくなってる昨今、傷跡を残すようなへまはしない。彼らは精神的ダメージを与える為一芝居うったのだ。だか... 続きをみる

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  • 選ばれし救世主・その1

    未無来がチンピラ達と車に乗り研究所に向かう途中でのこと。 田舎の国道を軽乗用車が走っている。車内は陽気な笑い声であふれている。 「だからな、お父さん耐えきれなくなって部長にこういってやったんだよ 『ダレジャ?性もないダジャレ言ってんの。寒すぎてギャグクリ腰になっちまったよ』ってな。」一瞬、車内が静... 続きをみる

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  • 未無来統一という男・その6

    未無来所長は、組の事務所に出入を許され、暫くは退屈しない日々を於くっていたが、何時までもそうしている訳にはいかないと思った。そして朝方研究所に戻る途中、若い下っ端がささいな事故を起こしてしまったのだ。後部座席で(やれやれ・・・)と事が収まるのを待っていたが思わぬ事態になったらしい。一人の少女に暴力... 続きをみる

  • 清志が消えた・その11

    「ふあwwぁ」突然龍二が大あくびをしたので、張り詰めていた空気が一瞬にして消え去った。 「もういい、やめろ。しようもない。この事務所や俺達を汚い血で染めるつもりか?馬鹿ばっかりだな、全く」「お前、俊介って言うのか?お前だけだな、まともな考え方しているのは。あそこにいる調子もんの教育もしてやれよ」顎... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その10

    事務所内が立山を取り囲んで騒然としている中、龍二だけはあくびを嚙み殺しながらソファーに座っている。それは殺気立った周囲の中で、異様に映った。まるで同じ場所に居ながら、彼だけ別世界に存在しているかのような・・・。誰もいないソファーに、座っている龍二を切り取ってきて張り付けた合成写真のような、完成した... 続きをみる

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  • 未無来統一という男・その5

    勝ち誇ったように退室した加藤の残像でも見ているのか、乾は暫くの間、身動ぎもせず鬼の形相でソファーを睨みつけていた。「おのれ~出来ぞこ無いが~偉そうにー!あいつだけは絶対に許さんww!」思わず声に出してしまう程、激昂していた。 が、数十秒後 さすが東大出の超エリートは冷静さを取り戻していた。最近使う... 続きをみる

  • 未無来統一という男・その4

    厚労省のトップに居座ってるその男は、加藤と同期であった。 不器用な彼とは正反対に、あらゆる汚い手を使いまくって最高速で 今の地位に登りつめた男である。同期ゆえに、互いの胸の奥で 微妙に意識する存在であった。片や優越感と蔑みであり、片や誰よりも遠避けたい世界で最も嫌な男なのである。その彼から呼び出さ... 続きをみる

  • 未無来統一という男・その3

    帰宅途中の加藤は胸を張り、颯爽と歩いていた。自分は森羅万象全てから祝福されているとの心持ちであった。(無敵だ、あのエキスを飲んだ時から私は無敵になったのだ。あふれ出るエネルギーがそれを実証している。)自然に笑みがこぼれ、思わず高笑いしたい気分だ。 普通なら朝帰りなどしたら、疲れ切ってとても正常な行... 続きをみる

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  • 未無来統一という男・その2

    この章は18歳未満お断りです^^;小説の流れ上、どうしても必要だと判断し、少しだけエロい筋書きとなっておりますので><;。よいこのみなさんや真面目な方々は、す~っと流し読みしていってくださいね^^; そのドリンクを飲んだ瞬間、言い様のない強烈な生臭さと『ドロリ』とした粘リ気のある液を喉元が本能的に... 続きをみる

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  • 未無来統一という男・その1

    (あ~、ここだ、ここだ。)地図らしき物を手にし、ようやくたどり着いたと云わんばかりに『ふーっ!』とひとつタメ息をついて加藤は玄関前に立った。彼は厚生労働省の外回りで、申請登録を受けてここに訪れたのだった。ビルのテナントに金看板で「医療研究所 所長 未無来 統一」(みむら・・ふざけた苗字。偽名だなこ... 続きをみる

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  • イブ#その56

    薄汚れたハーフコートの男の真上でホバリングしているイーグル・アイからの映像は、イブの予想を裏切るものだった。 明らかに怪しいと睨んだその男の行動は、普通客以上に正常だった。なぜなら、商品棚から遠く離れた通路に佇んで殆ど移動しないからだ。 買い物客が右往左往している中、その男だけが静止しているのはあ... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その9

    「雅次兄さん・・・。あっ、危ないじゃないっすか!怪我すっから、そんなもん収めてください」立山から3,4メートル離れたところで、真っ青な顔色をして、震えながらドスを構えているのは、立山より2つ年上の雅次だった。荒っぽい連中の中にあって、普段はとても大人しく、性格的に似ている所がある立山とは、割と気が... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その8

    「警察に電話しますわ。まだら組に誘拐されたと」立山はスッとポケットから携帯を取り出しボタンを押そうとした。「ちょっと待てや、こらww!」組長が乗り出して押そうとした方の腕を掴んだ。立山は組長を睨みつけながら「今すぐ清志を解放して下さい。連れて帰りますから」声に怒気を孕んで叫ぶように立山が言った。組... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その7

    班目が立山の向かい側のソファーにドカリと座り、その隣に伏し目がちな龍二が静かにゆっくりと座った。ソファーの脇に立っている俊介に顎をしゃくって(引っ込んでろ)と合図を送る。俊介は一礼して退いた。班目はイラついている様子を隠そうともせず、テーブルに備え付けられているシガレット・ケースから、タバコを一本... 続きをみる

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  • イブ#その55

    偵察機よろしく張り切って飛んで行ったビートルであったが、イブの人工頭脳を介して映し出された映像は、前後、左右、上下を目まぐるしく移動し心臓部の赤い鉱石は焦った。そこで原因究明をコンピューターに指示したところパーツが1個足りなかったと解明し急遽戻ってくるようにビートルに命じた。やはり制作者の博士がい... 続きをみる

  • イブ#その54

    イブは機械として見れば他に類を観ない最高傑作品だが、ヒトとしての判断能力にまだまだ経験不足であり二進法的思考が勝っているから、この場合『良いか悪いか』のふたつしか選択枝がなく『悪い』と人工頭脳がジャッジすれば『良い』状態にするべき対策を図って行動を起すようにできている。ファジーという概念が今はまだ... 続きをみる

  • イブ#その53

    万引きに効果的な方法として警備員の巡回と監視カメラの設置及び増設がある。警備員の制服は警察のそれと酷似しているので犯行に及ぶ輩には絶大な効果がある。これは、捕まえるのを目的とせず抑止効果を発揮させる為。だが同時に善良な顧客に威圧感を与えてしまう恐れもある。だから、頻繁な巡回は避けている。それに対し... 続きをみる

  • イブ#その52

    イブの勤めるスーパーは『あけぼし』チェーン葉舞店。均一家の借家も葉舞町に入っている。 兼業農家や、少し離れた場所にある新興住宅地からの客が主に来店し、駅の反対側に建っているマンションからは余り来ない。踏切がネックとなり大回りしなくてはならず、それならと少し離れた郊外の大型スーパーに車で出掛けるから... 続きをみる

  • イブ#その51

    午前10時前、白衣を着た博士は車椅子を操作して正面玄関前に来た。自動ドアを抜けた瞬間、自然光に耐えられず立ち眩みを覚え、真っ白な景色が本来の色を取り戻すまで十数秒を要した。博士は、目が慣れて少し霞のかかった空を見上げ、深呼吸とも嘆息ともつかない息をひとつ吐いた。 大型自動車の低いエンジン音に気付き... 続きをみる

  • 清志が消えた・その6

    本革のシートに立山は浅く座った。周りは異様な程、静まっている。顔見知りの面々がちょっかい掛けてくるかと思ったがそれもない。究極の居心地の悪さだ。俊介が、組長と龍二のいる部屋に入って10分程経っている。中で何を話しているのか、なかなか出てこない。立山は、イラついてくる気持ちを抑えながら待つ。ようやく... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その5

    立山の妻、幸恵は立山と知り合う以前、班目の女だった。班目が組長になる前の話。 JAに勤めていた頃、仲間たちと飲み歩いた時に何気なく入った店で幸恵と出会い、見染めてしまってから、店に頻繁に通うようになった。幸恵も立山の事を憎からず思うようになり、やがてお互いに愛情を抱くようになったが、幸恵に近着こう... 続きをみる

  • 清志が消えた・その4

    次の日の午前10時過ぎ、立山はまだら組が所有するビルの地下駐車場の中に車を停め、その中でシートを倒してタバコを吸っていた。煙が籠るので、両方のサイドウインドウを半分開け、外気を取り込んでいる。この駐車場に入る前に、「喫茶まったり」に組長と龍二がいないか車内から確認したが、いつもの席に人影がなかった... 続きをみる

  • 清志が消えた・その3

    立山がいつになく深刻な顔で、何か考えている。沈黙に耐えられずに、冴子が「コーヒーでも入れるわ」と立ち上がる。立山は表情を変えずに「うん」と返事した。(明日はハヤテ君を迎えに行く日だ。ハヤテ君は修行の成果を出せたんだろうか?)台所の方から、コーヒー豆をミルで砕く音がする。 (気を使わなくていいのに。... 続きをみる

  • 清志が消えた・その2

    山の日暮れは早い。午後4時半を過ぎると、もう辺りは薄暗くなってきて(今日はこれくらいにしておこう)と天狗の面を外し額の汗をぬぐった。 原っぱから家に向かう道すがら、ハヤテは疲れ切った足取りでトボトボと歩いてはいるが気持ちは充実していた。何度も崖の上からダイビングを繰り返しているうちに、段々と翼を動... 続きをみる

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  • 清志が消えた・その1

    ハヤテは翼を羽ばたかせた感覚を忘れないうちにと、腰かけていた岩から立ち上がった。「よし、やるかー!」と声に出して、気合を入れた。 先ほどのダイビングで、心身とも、取り分け精神的疲労は激しかっただろうが、そこは15歳という若さがものをいう。たった10分程で急速に回復できた。 多分、背中の羽根が動かせ... 続きをみる

  • 山籠もり・その16

    腰かけるのに丁度よい岩が目に入った。ハヤテは安堵のため息を吐きながらそこに腰を下ろした。 なぜ飛べたのか?なぜ翼を羽ばたかせることができたのかが分からない。決死の覚悟からの火事場の底力なのか。わからない・・・。今一度、ダイビングした後の自己分析をしてみようと頭の中で再現した。すると疑問に思うことが... 続きをみる

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  • 山籠もり・その15

    ハヤテが地面を蹴って幅跳びでもするように空中に身を投げた。一瞬浮いたように感じたが、あっという間に落下し始めた。 飛び込む前にシュミレーションした通り、うつむせになり両手両足を大きく広げ、空気抵抗を最大限受ける姿勢をとった。 それでも自然の中では石ころや木の葉と何ら変わりはない。ただただ落ちていく... 続きをみる

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  • 山籠もり・その14

    ハヤテはしゃがみ込んだまま、いろんなことを思い出していた。じいちゃんとの生活や、森の仲間たちとの楽しかった日々が次から次へと頭の中に浮かんでは消えていく。今思うと、一本歯下駄をじいちゃんに与えられ傷だらけになっていた苦痛の日々も、あれはあれで結構有意義に過ごしていたんだなあと振り返る。そんな事を思... 続きをみる

  • 山籠もり・その13

    (僕は宙を飛ぶとき風を起こす。その風は僕の全身を包み込み、目標にまで運ぶ。あらかじめ目で目標を確認し、そこまで行こうと意識する。すると、一直線に風が運んでくれる。だが、ひょっとすると持っているチカラの使い方を、それしか知らないからやっていないだけなのかもしれない。飛行中に念じて風を変化させ、自在に... 続きをみる

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  • 山籠もり・その12

    次の日の朝、ハヤテは草原に来ていた。昨日とはうって変わって雲一つない快晴だった。 「う~ん!いい天気だ!」深呼吸をひとつし、青空を見上げている。昨夜、目を瞑りながら考えた案を実行しようと、既に翼を背負って立っている。この草原を抜けると絶壁がある。子供の頃は、じいちゃんに絶対に近寄ってはならないと事... 続きをみる

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  • 山籠もり・その11

    立山が帰った後も、何をするではなく縁側に腰かけて立ちこめている霧を観ていた。 霧は、やがて水滴となりポツリポツリと小降りとなって、そのうちザーザーと縁側を濡らす程の 本降りとなった。ハヤテは雨に濡れた下駄を縁側のふちを片腕で支え、もう片方の腕を伸ばして鼻緒を掴むと引き上げた。座敷を通り抜け玄関に来... 続きをみる

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  • 山籠もり・その10

    山籠もりして三日が経った。今日は今にも雨が降りそうな天気だ。湿気で衣服が肌に纏り付いてくるような不快感。まだ午前10時頃なのに日が遮られて薄暗い。漂う濃霧によって4,5メートル先が見えない。麓の民家の方から見れば、山に雲が垂れ下がっているように見えるだろう。 幾らなんでも、こんな日に飛ぶことはでき... 続きをみる

  • 山籠もり・その9

    ハヤテは、その場で膝を曲げ腰を少し落として軽く飛び上がった。すると、ふわりと4,5メートルの高さまで浮かび元の位置に着地した。まるでハヤテの周りだけ重力がなくなったようだ。立山は、ふと、古い記憶の中にある映像を思い浮かべた。それはアポロ11号が月に到着し、宇宙服を着たアームストロング船長が月面を歩... 続きをみる

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  • 山籠もり・その8

    スープを極わずかに残してカップを灰皿代わりに使っていた立山が、短くなったタバコをそこに捨てると小さく『ジュッ』と音がした。消えたのを見届けながら蓋を閉じると、ハヤテのそばに来て、また胡坐をかいた。断るわけでもなく羽根を触ったり布で編みこんだ背負子や肩ベルトを撫でたりしていたが「つくづく偉大な人だっ... 続きをみる

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  • 山籠もり・その7

    ラーメンのツユを飲み干して「あ-美味かった!ごちそうさん。」と言ってハヤテは立ち上がった。 立山は既に食べ終わって、食後の一服をしている。本数は一日10本に満たないが、無職の今になっても辞められない。これも家族に嫌われる原因のひとつになっているのだが、分かっていながら踏ん切りがつかないでいる。ハヤ... 続きをみる

  • 山籠もり・その6

    鞍馬家に着いた時、時刻は既に正午近くになっていた。人や車の行き来がないのか 道らしきものはあるのだが、雑草がかなり伸びていて、それがバンパーやシャーシーを擦り車内にかなり大きな音を響かせた。登坂の上にこの雑草なので、2Dに切り替えながら、じわじわと進むほかなかった。しかし家の庭先に着けば雑草は生え... 続きをみる

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  • 山籠もり・その5

    食料を大袋で二袋分買い込み、それとは別に立山が清涼飲料水のペットボトルを3本と牛乳のパック3本を入れた袋をトランクの中に納め、マルサンを出た。 立山は、冴子からお金を預かっていたが、飲み物は自腹で払い、ハヤテに「これは俺のおごりだ。」と言って笑った。売り場でハヤテがかごに入れた物を立山がチェックし... 続きをみる

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  • 山籠もり・その4

    「何だい、お前は~!」ハヤテの表情から好まざる相手だと察した立山が、ハヤテを庇うように前に出た。元はヤクザだから、凄みを効かせると、さすがに伊藤は退いた。周りにいた買い物客たちも驚いて、遠巻きに様子を観ている。 「あっ!いやいやそうじゃなくて・・・」伊藤は少し言い淀み、ハヤテに向かって話を切り出し... 続きをみる

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  • 山籠もり・その3

    竹で織り込んだ葛籠をハヤテが抱かえてきた。車の脇に立っていた立山が「面白そうな物を持って行くんだなあ。」と、好奇心を露わにした。「向こうに着いたら見せますよ。」と、ハヤテの目が笑っている。 「後部座席に載るようだな。」とドアを開けて立山が受け取り積み込んだ。 ふたりは車に乗り込みシートベルトを着け... 続きをみる

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  • 山籠もり・その2

    夕食が終わり、ハヤテと瑠美と秀吉は居間でテレビを観ている。まだ6時過ぎだから、ニュースとか報道番組ばかりだ。瑠美は7時からの歌謡番組を楽しみにしている。AKBやEXILEもいいけど、今日はmiwaちゃんが出演するという。瑠美はmiwaが大好きなのだ。シンガーソングライターとしてデビューし、小栗旬主... 続きをみる

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  • イブ#その47

    バッグを受け取ったイブはいつもの(これしかない)白い夏用のドレスを取り出し、目の前にかざした。均は何をするのかと、そのかざしたドレスを漠然と見ている。一瞬イブが体勢を整え、構えたようにみえた。刹那、イブを包むように旋風が起こり砂煙が舞った。均は思わず腕で顔を庇った。その間一秒にも満たない。「さあ、... 続きをみる

  • イブ#その50

    博士が記憶を取り戻したいと切望する中で、松本先生がふと洩らしたひと言が気になっていた。救急車で運ばれた時、衣服は血に染まっていて廃棄したのだがそれが白衣の様だったと。白衣を着る職業はそう多くない。病院関係、介護関係、薬剤関係、科学、化学研究者、等等。調理師も白衣を着るがそれではない様だったと。これ... 続きをみる

  • イブ#その49

    事故で記憶をなくし入院してから2週間。工学博士の所典夫はようやく折れた足の骨もギブスで固定され(それまでは足首にボルトを通してワイヤーでぶら下げ、折れた骨同士をつなぎ合わせていた。)車椅子を担当看護師の伊藤さんに押してもらい、一日に一時間ほど院内を散策することを許されていた。右腕、右足ともギブス固... 続きをみる

  • イブ#その48

    海水浴に行った日から一週間が経ち、イブの石田家での生活も少しづつ慣れてきた。就職口だがいずれは将来性のある一流企業か、類稀なる容姿を生かせる職に就くためのオーディションに応募する機会を待とうとの、均の提案が支持された。均は、イブがロボットだと知っているから、自分で『将来性』と言った時、思わず苦笑し... 続きをみる

  • イブ#その46

    バショウカジキのような強靭で大きな尾鰭はないが、その分足部の振幅を小さくし超速駆動する事でハンデを補って爆発的遊泳を可能にした。一方沖合いで遭難中のボートの上では、泣きじゃくる弟をなだめる事に疲れた姉が、ほとんど力の入らなくなった腕で、それでも歯を食い縛りながら、再びオールを握り漕ぎ出していた。し... 続きをみる

  • 山籠もり・その1

    太陽が西に傾き、骨とう品屋・響の看板が朱色に染まって眩しい。 夕飯まで、まだ間があるので、ハヤテはじいちゃんが作った木工品や彫り物を見ている。 冴子は外国本の翻訳が順調なのか、ご機嫌な様子で鼻歌交じりに料理を作っている。 麗美は自分の部屋で宿題と予習、復習をしている。家庭教師だった清志に辞めてもら... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その10

    秀也は非常階段を降り、校舎の裏側を通って垣根の外に出た。ここは昼間でも薄暗く、舗装が施していないため雑草が足のくるぶし程伸びてはいるが、かなり広い側道である。ここを通る車や人はいない。なぜなら、道なりに進むと行き止まりとなっているからだ。通知表に影響する試験日には佐竹がこの場所で車の中から解答を秀... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その9

    そして今また、忌まわしいあの鳥が秀也の襲ってきた。なぜなのかわけがわからないが、とにかく屋上の出入り口まで走って逃げ延びなければ、またあの時の二の舞になると思った。必死の形相で走る。喘ぎながらも、ドアまで1、2メートルのところまで来た。(助かった!)と思った。ノブに手を掛けて開こうとしたとき後頭部... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その8

    列車から引きずり出し、いきなり引き倒したが坊主が柔道の受け身のようにクルリと回転し跪いて俺をみている。俺は面白くなかった。倒した後、足蹴にして、のた打ち回らせるタイミングをなくしたからだ。しかも、奴は挑戦的な目で俺を見上げている。俺は空手を習っているから、ある程度体格体形で、武術の心得えがある人間... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その7

    革靴のつま先で軽く蹴ると、座席シートに座っている坊主が驚いた顔で俺を観た。俺は素知らぬ顔で美香に向かい、少年にも聴こえるように話す。「ちょっと足んねぇんじゃないか?こいつ~」そう言ってふたりして笑ってみせる。そしてまた、『コツッ』『コツッ』と蹴る。少年は顔を顰め、足を移動させるが、それを追いかける... 続きをみる

  • 清志と秀也・その6

    (あいつだ。あの魔鳥が、またしても現れた!)あの時の恐怖心が蘇って、怯えた形相となる。一度ならず二度までもホバリングして睨みつけてくる巨大な魔鳥に、思考は正常さを失いパニックを引き起こした。秀也からしてみれば、不気味で非現実的でさえ見える恐ろしい魔鳥が何ゆえにまたしても攻撃してくるのか原因が分から... 続きをみる

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  • 何の種を撒こうかな?

    2月半ば、まだ寒さが残るこの時期、何の種を撒けばいいのか検索したらほうれん草かカブだった。 ほうれん草もカブも昨年のが残っていた。何故かほうれん草の発育がよくなかったが、やはり今年もほうれん草は芽が出なかった。 昨日ホームセンターをうろついていたらじゃがいもの種芋が売っていた。もう、そんな時期か?... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その5

    秀也は給水塔の土台のコンクリートに腰かけ、両手をあごの下で組んで、清志が近づいて来るのを見ている。清志は近づくにつれ、恐怖心が芽生えてきた。一歩一歩が、とても重い。自然に諤々と膝が震えてくる。自己暗示もどこかに飛んで行った。それでも、ようやく目の前まで行くと「用事ってなに?」と、言えた。秀也はそれ... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その4

    弁当をたいらげ「ふ~」と一息吐いて前を見ると、いつの間にか秀也が席をたっていた。 それに気がつかなかった自分に、彼に対して神経過敏でないことは良い兆候だと安堵した。 いつも清志は、弁当の後は机にうつ伏して昼寝をするか、次の授業の予習をする。昨日休んだ分を取り戻すため、教科書を開いた。すると、ポケッ... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その3

    清志が教室に入ると既に秀也は居て、横向きに座り隣の男子と雑談をしているところだった。 秀也の後ろが清志の席だ。通路を長い足でせき止められている。清志はその前で立ち止まり「おはよう。」と声を掛けた。秀也は、その声で初めて気が付いたように足を引っ込め「あっ、おはよう。体の具合は、もういいのか?」と、一... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その2

    清志は以前の体調に戻った喜びを噛みしめながら学校に向かっていたが、それと同時に大きな難問が待ち受けていることが分かっているから、弱気にならないよう自己暗示をかけ続けた。(秀也なんか怖くない。同い年じゃないか。負けない、負けるもんか!)だが、あの体格と腕力では、いざとなったらとても太刀打ちできない。... 続きをみる

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  • 清志と秀也・その1

    清志はいつも通り7時過ぎに起床した。前夜に飲んだ松本病院の錠剤が本当に効くのか不安で、なかなか寝付けなかったが起き上がってみると、何の違和感もない。(効いている・・・。間違いない)これも皆、冴子さんやハヤテ君たちのお陰だと、心から感謝した。「清志~!起きてる~?」母の呼ぶ声がする。「は~い!」自分... 続きをみる

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  • ハヤテ、山での修行を思いつく。2

    一本歯下駄に指を通しながら「ちょっと出かけてきます。」と店を出たのが10時前。店の前は、本道から外れた枝道だから車の行き来も少ない。しかも通勤時間帯はとっくに過ぎている。ハヤテは、のんびりと街並みを眺めながら歩いている。本道に入ると、さすがに騒音が激しくなる。山を下りた当初に受けたカルチャーショッ... 続きをみる

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  • ハヤテ、山での修行を思いつく。1

    次の日の朝、ハヤテは心地よい気分で目が覚めた。昨夜の夢が、鮮明に蘇ってくる。(じいちゃんが天国から僕を応援してくれてる。たぶん母さんも)カーテンを開けると、朝日が差し込んでパーッと部屋を明るくした。窓を開ければ、爽やかで新鮮な空気が風と共に入ってきた。おおきく深呼吸しながら、(そういえば、此処に来... 続きをみる

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  • イブ#その41

    歩いて10分程でスーパーに着く。着くまでに歩美は思いつくままイブに質問してきた。 ホームレスしていた以前は何処にいたとか、歳は幾つだとか、親は何処にいるとか・・・。 殆ど答えられない。苦笑を返すばかりだ。歩美も最後は音をあげて黙ってしまった。 スーパーは年季の入ったと云うべきか、ガラスには隙間がな... 続きをみる

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  • イブ#その45

    イブはレベル2にセットしてジャンプした。普通なら砂浜か波打ち際に落ちて、その周辺にいる人々を巻き込む二次災害の恐怖が、見上げている者の脳裏をかすめたのも頷ける。その頃、弘と歩美はビーチ・ボールに夢中で気付かなかったが、均は何か胸騒ぎがして監視台の方を見たところだった。(あちゃww!何、やらかしてん... 続きをみる

  • イブ#その44

    いつも買い物に行くスーパーマーケットの隣にあるバス停まで、それぞれがバッグやらクーラーボックスに楽しみを詰め込んで歩いていく。途中で歩美のリュックをイブが持ってあげた。バスに揺られて30分、大きなソテツの木が道路の両側に並び、葉が潮風に心地よさげに吹かれている海岸前の停留所に停車した。真っ青な空は... 続きをみる

  • イブ#その43

    夕食後、弘は早朝と云うか深夜と云うか、午前2時に起きて新聞配達所に出勤しなければならないので、風呂に入り寝るために早々と自分の部屋に戻った。他の3人は台所で雑談に講じている。「弘さん、頑張っているんですね。」イブが言うと「ああ、随分助けてもらってる。」と、均が今しがた出て行ったガラス戸に目をやりな... 続きをみる

  • イブ#その42

    買い物から帰り、ふたりはキッチンに入る。一応古臭い流し台が設備してあるし、電子レンジやオーブントースター、ガスレンジもある。イブはそれらの一つ一つを観察するようにみた。人工頭脳が解析を始めている。「イブさんはお料理したことあるの?」買い物袋からテーブルに食材を移しながら歩美が偉そうな事を言う。買い... 続きをみる

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  • 葛籠・その5

    その夜、夢の中にじいちゃんが現れた。それを夢とは思えぬほどのリアリティーで、ハヤテはみていた。 ハヤテは日和山にいた。なぜか冴子に買ってもらった厚地の黄色いシャツを着ている、幼い頃の自分がいる。 土間にしゃがみ一本歯下駄を履こうとしているハヤテに、囲炉裏にあたって赤ら顔のじいちゃんが声を掛ける。「... 続きをみる

  • 葛籠・その4

    天狗の面を被ったハヤテは、呻き声を発しながらその場に蹲ってしまった。その背中が小刻みに、打ち震えている。冴子と麗美はいきなりの出来事にしばらくの間、動くことさえできなかった。が、はっとして目が覚めたように冴子が駆け寄り、背中を摩ろうとした。しかし白い羽根が邪魔だったので、腕を触ってハヤテに声を掛け... 続きをみる

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  • 葛籠・その3

    麗美が宿題を終えて、二階から降りてきた。もう夜の8時だ。居間にあるテレビのリモコンを取ってテレビに向け電源をオンにする。チャンネルを次々切り替えていたが、気に入った番組がないのかオフにしてポイっとテーブルに投げ捨てる。「あ~あ、つまんないー」両手を頭の後ろに組み、口を尖がらす。ふと、母親の冴子が妙... 続きをみる

  • 葛籠・その2

    その夜、ハヤテは新聞紙が敷き詰められた真ん中に、ちょこんと座らされていた。特大の青いビニール袋の底に穴が開けてあり、頭からスッポリ被せられて穴から頭部だけが抜け出さている。冴子が、シャキシャキと鋏を鳴らしながら、ハヤテの髪形をどうしようかと模索中。(まずは、この長い尻尾をバッサリやるか~?ケッケッ... 続きをみる

  • 祖父の残した葛籠(つづら)・その1

    いつの間にか太陽は西に傾いて茜空となっていた。「何かあったの?」と、好奇心で目がぎらついている立山に、冴子が事の成り行きを短くまとめて話して聞かせた。 立山は「へー!」とか「あ~そう!」とか合いの手を入れながら、やけに楽しそうだ。「・・・っとまあ、こういうことだったのよ。」冴子がやれやれ疲れたわと... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その18

    「私は随分と悩みました。大学4年生になっていて、周りは皆、就活に励んでいます。今になってマルサンから方向転換は、目標を失うことに等しい。ですが、現状を見ると入社できたとしても魅力の持てない箱の中で、終身勤め上げなければならない。もしかして、喜びも見つけられず苦痛だけの日々を定年まで続けなければなら... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その17

    伊藤は少しイラついていた。店長の大学生時代の話はいつまで続くのかと。祖父の偉大さは赤の他人に言われなくても俺はよ~く解っている。今は時々しか会う機会がないが、幼少の頃はとても可愛がってもらった。祖父から直接仕事の話なんか子供の自分には話すわけがなかったが、両親から事ある毎に偉業を聞かされ育ったから... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その16

    「私はね~、大学生になりたての頃、本屋さんで何気なく一冊の経済誌を手に取ったんですよ。ほんとに何気なく、ぺらぺらと流し読みしてました。 そして中ほどのページで手が止まったんです。独占インタビューの記事でです。頭の禿げ上がった如何にも人の良さそうな初老の方が写ってました。タイトルには『小さな雑貨店か... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その15

    薄暗い通路を通り、冴えない表情の伊藤が事務所に入っていく。社員たちは、いつもの様に机に向かってパソコンの操作や、打ち合わせをしているが、雰囲気がいままでと違っていると感じた。それは、伊藤が入室した途端に変化したものだと気付く。(皆が俺を意識している。すでに俺の素性が広まったか?) 「おい、北村~。... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その14

    ふたりを乗せた車があざ笑うように伊藤の目の前を通り、走り去っていった。ドアの外に出ていた社員や野次馬達も、ひとりふたりと店内に戻って行く。 悔しさに唇を噛み締めていた伊藤だったが、何かを思いついたように従業員通用口の方に駆け出した。従業員通用口は、ひと気のない店の裏側の一角にあった。従業員のみが出... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その13

    レンタカーの適度にエアコンが効いている車内でシートを倒し、立山は両手を頭の後ろで組んで目を閉じている。 清志は、デパートの正面玄関の方を呆然と見て冴子らが出てくるのを待っている。 「あれ?!立山さん!あれ、響さん達じゃないいですか?」その言葉に立山が体を起し、出入り口を見た。「何か、変じゃないです... 続きをみる

  • 新型コロナワクチン3回目行ってきました。

    前回と前々回はファイザー、今回はモデルナ。以前同様、当日と次の日腕に鈍痛がしていたがそれも治まった。人によれば高熱が出て2.3日寝込むものもいるという。イヤミな同僚と話すと、接種後の体調が軽い者は効き目が薄いかも知れんぞと何の根拠もなくのたまった。こう言うデマを流す輩が少なからず居る。そう言う者に... 続きをみる

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  • イブ#その40

    「お兄ちゃん?」歩美が居間に入ってきた。部屋の空気が重いと感じ2人の顔を交互に見ながら「どうかしたの?」と訊いてきた。均は、「あ、いや・・・。どうして?なんか用かい?」歩美を見る。 「勉強、一区切り着いたから、夕飯の買い物に行って来ようと思って。冷蔵庫の食材、残り少ないから」均に言い、イブに笑顔を... 続きをみる

  • イブ#その39

    「私の体を造ってくれた博士は、何故か消息を絶ってしまったのですが・・・」 「私を救助用ロボットとして確立したかったようで、その存在を世間に知ら示める意味合いで、一般路上を走破させたのかも知れません」イブはそう言って、まだ論評を展開しているテレビを観た。「こういう騒動になることを想定していたのか、考... 続きをみる

  • イブ#その38

    「おそらく・・・」イブは小首を傾け、斜め45度から悪戯っぽい目で均を見ながら言った。 「宇宙から飛来した謎の物体に、この星を乗っ取られると危惧している?」図星だった。 (テレパシーで俺の考えていることを読んでいるのか?)冷や汗が背中をひと筋流れた。驚愕で目を見開いている均に向かいイブは柔らかい眼差... 続きをみる

  • イブ#その37

    「私の星にも地球の様に動ける生物はいたの。でも言葉では伝えない。体には喉とか口がないから。この国で言う思念、テレパシーを使うのよ。そこで私は神に奉れていた。私は動けないけど彼らを使って治めていたの」まるで空想の世界だ。にわかに信じ難い話を目の前の女性型ロボットが淡々と話していく。「数10年後に巨大... 続きをみる

  • イブ#その36

    「単刀直入に訊きますが・・・テレビに映っている謎の女性、あなたじゃないですか?」弟妹が出て行った後も、しばらく無言でどう切り出そうか迷っていた均だが、意を決して言った。 ひとつ間違えば人権蹂躙で訴えられかねない発言だが、彼には確信があった。 じっとイブの目を見詰める。(これは目なのか?目に似せた、... 続きをみる

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  • 民謡ってすごいと思う。

    今、ユーチューブで民謡日本一の朝倉さやさんがjーポップを東北弁で歌っていて話題になっている。その声は3オクターブは有るだろうし高音部も涼しい顔で難なく出せてるのに驚く。私の幼少の頃は三橋美智也さんが民謡上がりで素晴らしいのどを披露し、ヒット曲を連発し、有名どころでは金沢明子さんや細川たかしさん。み... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その12

    冴子は事務所の扉を開け放ち一段と歌声を張り上げた。冴子の歌声を聴かせて眠らせる能力は、移動する際には不利となる。 歌声が届かなくなれば、術にかけられていた者はすぐに目覚める。現状を取り戻す時間は個々によって違い、普段の寝起きとほぼ同等だ。 だが目覚め後も、いきなり眠ってしまったというショックと夢の... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その11

    伊藤が、いきなり専属キャラクター云々と口走ったので冴子たちより店長がびっくり顔で彼を見ている。目の前に置かれたコーヒーも目に入らないようだ。 「い、伊藤君、そりゃあ先走り過ぎだよ~。海のものとも山のものとも・・・いや、失礼。と、とにかく何の肩書きもない君が勝手に推し進めることじゃないよ。今日のとこ... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その10

    窓際の上座に冴子、その隣にハヤテが居心地悪そうに座っている。冴子の前に店長がお飾りで座らされ、伊藤だけがやけに満面笑顔でふたりを見つめている。ふたりの前に名刺が差し出されている。名刺にはマルサンデパート如月支店・店長 里中秀雄とある。「こちら店長の里中です。」と伊藤が紹介すると、営業的な作り笑いを... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その9

    立山はシートを少し倒してぼんやり車外の景色を見ている。太陽の光で何もかもが白っぽく映っている。(働き口を早く見つけないとな・・・) トントンとリヤ・ウインドゥを叩き、顔を向けると清志が覗き込んでいる。体を起し、少し開けて「開いてるから入れよ。」と、声をかけた。 後部のドアを開け、座席に座るなり、「... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その8

    一方、冴子とハヤテはまだ柱の影に潜んでいた。一度出掛かったが、冴子が何を思ったのか直ぐに引き返したのである。 ハヤテの耳から栓を外し、「まるちゃん、作戦変更するわ。これだけ大勢の人達を眠らせたら、間違いなくけが人が出るわ。見て。あそこにエスカレーターが動いているし、こちらに幅の広い階段がある。エス... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その7

    店長は思わず両肘をデスクにのせて手を握り、その上に顎を掛けてため息をついた。伊藤の提案をのんでしまった自分が情けないこともあるが、今後の展開に不安を感じずにはいられなかったからだ。店長は頭の中で若手社員の伊藤とは、どういう社内評価なのかを思い浮かべた。確か伊藤は入社5年目で、過去に本社勤務の経験も... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その6

    「やばいことになっちまったなww」2Fの通路をひた走りながら、目を皿の様にして冴子を探すハヤテ。 ふと、目の端に何かが引っかかった。急停止し、よく視ると婦人服売り場の柱の影からニョキッと腕が出て手招きしている。 (もしや、あれは・・・!)ハヤテは柱の影に近づいた。やはり、冴子だった。姿勢を屈め「「... 続きをみる

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  • 伊藤君の大誤算・その5

    この大型ショッピング・センターは広大な立地面積を誇るが高さは然程ない。階は1階と2階だけだ。1Fは西から電化製品や靴屋、本屋、軽食・ファースト・フード店があり、東側に薬や化粧品売り場。そして最も大きくスペースをとり食料品売り場がある。それらの中央に位置する所にイベント広場があり、土、日祝祭日には幼... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その4

    「ふー!」と大きく息を吐き「まっ、これで取りあえずはいいでしょ!」と満足げに微笑む冴子の横で、大袋を両手に提げて疲れ切ったハヤテがいる。 「パンツの裾直しは後日になったけど、また立山さんを頼むか、それが無理ならバスでも来られるから。」ねっ、とハヤテに笑顔を向けた。 適当に頷いているハヤテから目線を... 続きをみる

  • 伊藤君の大誤算・その3

    やがて一同は郊外にある大型ショッピング・センターに着いた。広大な駐車場と、どっしりとした存在感のある建物。遠くからでも見える大きな看板。 ハヤテは「わ~すげww!僕が住んでた日和山よりでかいんじゃないんかな~!」と、思わず感嘆の声を上げた。 そして、色とりどりに空に浮かんでいるアドバルーンを興味深... 続きをみる

  • イブ#その35

    依然、均が俯いたまま黙っているので微妙に白けた間ができてしまい、各自無言でテレビを眺めている。『・・・・いまだに足取りはつかめていません』画面では投稿者による動画の再生を次々と映し出し、5人の解説者があーだこーだと講釈を垂れている。対象となる者の映像はどれも鮮明でなく、特に近距離撮影に至っては高速... 続きをみる

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